第17章 現在・佑樹

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 佑樹は首を強く横に振って、美穂の幻影を振り払う。 「わかった。それで? 俺はこれからどうしたらいい?」 「たぶん、桜子さんの家に行ったら、2人がいると思うわ。そこで、何らかの証拠を押さえるのよ」 「そんなに上手くいくかよ……」  佑樹はボヤいて、ウィンナーコーヒーを啜る。 「上手くいくかどうかはわからない。でもね、手は打つつもりよ」 「どんなふうに?」 「まず、町村くんが桜子さんの部屋の前に着いたら、私の携帯にワン切りして」 「ああ」 「そしたら、私が、笹塚秀明に電話をかけるわ。狂った女を演じてね」 「狂った女?」  わざわざ演じなくても、お前は狂ってる……。  佑樹は心の中で思うけれど、口には出さない。 「で、町村くんは、部屋の前で中の様子を窺ってて。笹塚佑樹が中に入れば、私と電話してる声が聞こえるはずよ」 「まあ、たしかにそうだ」 「私が電話を切った後、少しだけ、2人の会話を聞いてて。それで、堕胎手術を思わせるような言葉が出てきたら、合い鍵を使って中に入って」 「中に入って、どうする?」 「それは、町村くんが考えてよ。表で話を聞いてたとか、いろいろ言い方はあるでしょ?」 「それはそうだけど……」 「大丈夫だよ。いざとなれば、私の名前を出しても大丈夫。でも、私の想定では、たぶん、笹塚秀明は、桜子さんと一緒にいるところを見られるだけで、そうとう慌てるはずだから」 「どうして?」 「あの男、小心者なのよ」  佐々木はそう言うと、バカにするかのように、ハハハッと笑った。それから、佐々木は紅茶を啜る。佑樹もウィンナーコーヒーを啜る。
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