1816人が本棚に入れています
本棚に追加
「クソッ!! なんて勘のいい女なんだ!!」
通りを歩きながら、佑樹は呟く。
まさか、佐々木に見抜かれてるとは思わなかった……。
あの女、いったい何を考えてるんだ……。
このまま、あの女の計画に乗ってて大丈夫なのか……?
でも、もし美穂が取り戻せるのなら……。
そんなことを考えながら通りを歩いていると、桜子の住むマンションの前に着いた。時刻は午後7時30分。佑樹はエレベーターに乗り、桜子の部屋の前まで行く。そして、携帯電話を取り出す。佐々木との約束のワン切り。佑樹はそれを実行する。
それから、辺りに人がいないことを確認して、ドアに耳を当てる。できるだけ音を立てないように、慎重に。すると、中から男の声が聞こえてくる。間違いない。美穂の旦那の声だ。
佑樹は会話の内容に耳を傾ける。だけど、ずいぶん普通の調子で話をしている。しかも、受け答え方からして、仕事の話みたいだ。
佐々木じゃないのか……?
佑樹がそのままドアに耳を当てていると、今度は桜子の声が聞こえてくる。桜子が電話の相手を尋ねている。そして、美穂の旦那が、“アルバイトの小林さん”と答えているのが聞こえる。
チッ!!
あの女、何やってんだ!?
佑樹が小さく舌打ちしたところで、中から携帯電話の鳴る音が聞こえてくる。
最初のコメントを投稿しよう!