第17章 現在・佑樹

10/24
前へ
/680ページ
次へ
 そんな2人を上から見下ろしながら、佑樹は笑顔で、 「笹塚さん、まさか2人がこんな関係だとは知りませんでしたよ」  と、厭味(いやみ)タップリに言う。そんな佑樹を、美穂の旦那が睨みつける。 「そんな関係も何も、僕と君原さんは、ただの会社の同僚だ!! 同期入社の仲間だ!!」  美穂の旦那が声を荒らげる。佑樹はフフッと小さく笑う。 「誤魔化さなくてもいいですよ。それ、堕胎手術の同意書でしょ?」  佑樹は笑顔で、テーブルの上の書類を指す。それに反応して、桜子が慌ててテーブルの上の書類をしまう。  その隣で、美穂の旦那が青ざめている。そんな美穂の旦那を、佑樹は追い詰める。 「桜子を妊娠させたんでしょ?」 「ち、違う!!」 「ウソなんかついてもバレバレですよ?」 「ウ、ウソなんかじゃない!!」 「まさか笹塚さんが、美穂さん以外の女を妊娠させてるとは思いませんでしたよ」 「だ、だから、違うんだ!!」  美穂の旦那は必死に抵抗するけれど、顔が完全に青ざめている。さっきから、言葉もしどろもどろだ。その様子がおかしくて、佑樹は思わず笑い声をあげる。  それから佑樹は、桜子の方に視線を向ける。 「笹塚さんはこう言ってるけど、桜子がサインして印鑑押してた書類、堕胎手術の同意書だよね?」 「こ、これは違うの!!」  桜子が慌てて否定する。 「何が違うの?」 「だから……別に、私のお腹の子供が、笹塚くんの子供ってわけじゃ……」 「へえ、やっぱり妊娠してるんだ」  佑樹は笑顔で言う。その瞬間、桜子が青ざめて俯く。
/680ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1816人が本棚に入れています
本棚に追加