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そんな桜子に、佑樹は問う。
「堕ろすの?」
「当たり前でしょ!? 堕ろすわよ!!」
「何で?」
「結婚もできないのに、産めるわけないでしょ!!」
「ふーん。結婚できないような相手の子供なんだ」
佑樹の言葉に、桜子がさらに青ざめる。
「ねえ、笹塚さん。桜子を妊娠させた相手って、誰なんですか?」
佑樹は美穂の旦那に視線を向けて言う。
「知るわけないだろ? 僕は相談を受けてただけなんだから」
「ああ、そうだったんですか。それは失礼しました」
佑樹は小さく頭を下げ、再び桜子の方を向く。
「笹塚さんに何の相談してたの?」
「どうするべきか相談してたのよ」
「どうして? 結婚できないような相手だから産めないっていうんなら、結果は決まってるんだから、相談したって仕方ないでしょ?」
「いろいろあるのよ」
「例えば?」
「堕胎手術の同意書とか」
「あ、そっか。笹塚さんに、父親のフリしてサインして欲しいってことだったんだね?」
「そ、そうよ。笹塚くんが協力してくれるって言うから、来てもらってたのよ!!」
桜子が言った瞬間、その隣で美穂の旦那が慌て始める。その様子がおかしくて、佑樹は笑う。
「何がおかしいの?」
桜子が言う。そんな桜子の問いに、
「答えは笹塚さんが知ってるんじゃないの?」
と、佑樹はイヤミたっぷりな笑顔を浮かべる。そして佑樹は、
「ねえ、笹塚さん。そうですよね?」
と、美穂の旦那に視線を向ける。
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