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美穂の旦那が黙って俯く。
「あれ? 笹塚さん、どうしたんですか? 桜子に説明してあげないと」
佑樹は勝ち誇って言う。
クククッ……。
何も言えないだろ……?
下手なウソなんか吐きやがって……。
こっちはお見通しなんだよ!!
ザマアミロ!!
佑樹はほくそ笑む。
「笹塚さんが説明しないなら、俺が説明しますよ?」
佑樹は言うけれど、美穂の旦那はその言葉に反応しない。
「どういうことよ!?」
かわりに、桜子が反応する。佑樹はフッと小さく笑ってから桜子を見る。
「堕胎手術の同意書に、笹塚さんがサインする意味なんてないってことさ。ですよね、笹塚さん?」
美穂の旦那は、相変わらず俯いたまま何も言わない。
「意味がわからない」
桜子が言う。
「堕胎手術の同意は、堕胎する本人と、その配偶者がしなければならないんだよ。だから、配偶者でない笹塚さんがサインしても、意味がないってことさ」
「えっ!?」
「そして、笹塚さんは、そのことを知ってる。だから、堕胎手術の同意書にサインなんてするはずない。たとえ、友達でもね」
「なんで笹塚くんが、そのことを知ってるって言い切れるのよ!?」
桜子が食ってかかる。だけど、佑樹はそんな桜子を、フフンと鼻で笑う。
「俺と笹塚さんの奥さんの話は聞いてるんでしょ? だったら、わざわざそんなこと説明しなくてもいいでしょ?」
佑樹がいやらしさを含んだ微笑みを浮かべる。そして、桜子は黙って俯く。
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