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「あんたさ、美穂の浮気をかなり責めてただろ?」
佑樹は美穂の旦那に向かって言う。だけど、相変わらず反応はない。
「あの日、ファンデーションで隠してあったけど、美穂の顔は腫れてた。あんたが殴ったんだろ?」
「…………」
「何も言えないのか!? ていうか、何も言えるわけねぇよな!! 殴るほど妻の浮気を責めといて、自分はしっかり外で浮気して、妊娠までさせてるんだから!!」
佑樹は一気に言うと、声を上げて高らかに笑う。
「さて、笹塚さん。どうしましょうか? 俺はあちこちで喋っちゃいますよ?」
「ちょっと待ってくれ!! 僕は……」
「僕は……何ですか? 言いたいことがあるなら、ハッキリ言ってもらわないと。だけど、その前に、ちゃんと認めてもらわないとね」
「何を認めるっていうんだ?」
「桜子を妊娠させたこと。それ以外にないでしょ? トボケないでくださいよ」
「だから、それは……」
「認めないんですか? 何なら、今すぐ美穂に連絡して伝えたっていいんですよ?」
「は!? 君は携帯電話から美穂の連絡先を消したはずだろ!?」
「電話番号やメールアドレスなんて、簡単に調べられますよ。そういうのが得意な奴が近くにいるんでね」
佑樹は言う。もちろん、ハッタリだ。美穂の連絡先なんて知らない。だけど、佐々木なら知っているかもしれない。いや、知っているに違いない。佑樹にはその確信があった。
いざとなれば、佐々木に連絡してみればいい。佑樹は自信満々の態度で、美穂の旦那を見下ろす。その態度に、美穂の旦那は覚悟を決めたのか、
「妊娠させた……」
と、ポツリとこぼした。
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