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「ねえ、桜子……。俺は桜子に謝りたいことがあるんだ……」
「謝りたいこと? 何よ?」
「桜子と付き合ってたとき、俺はホントに桜子が好きだったし、結婚も考えてた……」
「えっ!? でも……」
「ホントなんだ」
「でも、結婚は考えてないって……」
「うん。桜子に結婚の話をされたときは、もう、美穂と出会った後だったんだ……」
「どういうこと? 何が言いたいの?」
桜子が言う。桜子は佑樹の話の内容が想像できているのか、瞳いっぱいに涙を溜めている。少しでも頭を動かせば、涙がこぼれ落ちそうだ。
「美穂とは、最初は何でもなかったんだ。ただ、美穂がQ大の経済学部卒業だって言ってたから、勉強を教えてって話だったんだ」
「そのころ、佑樹はまだ、私のことが好きだったの?」
「もちろん。さっきも言ったけど、結婚も考えてた。でもね、勉強の話で美穂とメールをやりとりしてるうちに、美穂の方が積極的になってきて……」
佑樹が言った瞬間、美穂の旦那が、
「ちょっと待った!! 美穂の方から君を誘ったっていうのか!?」
と割って入る。だけど、その瞬間、桜子が、
「笹塚くんは黙ってて!!」
と、美穂の旦那を制する。桜子のあまりの剣幕に、美穂の旦那は言葉を失い、黙り込む。
そして桜子は、
「続けて……」
と、佑樹に話を促す。佑樹は黙って頷く。
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