第1章 現在・僕

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 僕と美穂は、結婚して五年になる。学生時代から交際を始めて、互いに二十五歳になった秋に結婚した。結婚二年目にして生まれた長女の美咲は、今年で三歳になる。  これまで、それなりに、幸せな生活を送ってきた。それなのに、不倫なんて、あり得ない……。  僕の頭の中によぎるのは、まず、長女の美咲のことだ。僕と美穂が離婚するのは簡単なことだ。役所に行って、緑色に縁取られた『離婚届』を貰ってきて、必要事項を書き込んで、印鑑を押して、役所に出せば、それで済む。  もちろん、僕は美穂を愛していないわけではないから、離婚届けにしても、そんなに軽々に出せるわけではないのだが……。  だけど、子供がいるとなると、話は別だ。美咲にとって、父は僕しかいないし、母は美穂しかいない。僕は美咲を手放すのは嫌だし、美穂だって美咲を手放したくはないだろう。  離婚すると言うことになれば、当然、どちらかが美咲を引き取るということになるだろう。もちろん、その点について、万が一裁判にでもなれば、僕は徹底的に争う。  だけど、一般的に、親権争いは、男性よりも、女性の方が有利であるという話もよく聞く。今回の火種は、完全に美穂がまいたものなのだから、必ずしも僕の方が不利であるとは言えない。だからといって、僕の方が有利とも言えないのだ。
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