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それ以前の問題として、僕はそもそも、美穂と離婚したいという訳ではない。僕は、美穂のことを愛しているし、これまでも、大切にしてきたつもりだ。だから、今は、正直に言うと、何をどうすればいいのかわからない。
僕はようやく目眩のような感覚から解き放たれて、姿勢を整える。
「大丈夫?」
「ああ」
“大丈夫なわけないだろう”と、僕は心の中で呟きながら、短く答える。
「ごめんなさい」
美穂は、もう一度、謝罪の言葉を繰り返した。
「いまさら謝ったところで、どうにもなるわけないだろう!? とにかく、明日にでも病院に行って、子供を堕ろして、これからの話はそれからだ」
美穂は当然、僕の言葉に、黙って頷くと思った。
だけど、美穂は、僕の思いもよらない言葉を返してくる。
「どうして?」
「どうして?って、どういうことだ!?」
美穂の言葉に、僕は思わず声を荒げる。だけど、そんな僕を前にしても、美穂は意外なほどに冷静だ。
「私は、子供のことも含めて、あなたと話がしたいの。私の中で、子供のことは子供のこと、それ以外のことはそれ以外のことなんていう区別はついていないの。そんな、結論ありきの話は聞きたくない」
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