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「ねえ、香代子。いい加減にしたら?」
長嶺が去るのと同時に千春が言う。
「だから、もうちょっと待ってってば」
「違うよ。長嶺先輩のこと」
「先輩のこと?」
「好きなんでしょう?」
千春はニヤリと笑う。
千春にはそのことも伝えてあるし、長嶺先輩目当てで囲碁部に入ったことも伝えてある。だから、知っていて当然なのだけど、改めて言われると顔が熱くなる。
「もう、揶揄わないでよ」
「揶揄ってなんかないよ。たださ、長嶺先輩、カノジョもいないんだし、いい加減に告白したら?」
「そうはいってもさ……」
「香代子、可愛いんだし、イケると思うけどなぁ……。長嶺先輩も、香代子のこと気になってるみたいだし」
「ホントッ!?」
香代子は思わず大声を上げる。その声に、他の部員たちの視線が集まる。思わず、『何でもないです』と誤魔化しながらも、香代子の純真な乙女心は、千春の一言で激しく膨らむ。
頭の中で勝手に長嶺とのデートシーンを想像し、思わずニヤつきそうになる。
「香代子、どうでもいいけど、囲碁の方も早くしてよ」
千春に催促されて、香代子は我に返り、大して何も考えずに石を置いてしまった。
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