番外編第1章 過去・香代子

6/18

1817人が本棚に入れています
本棚に追加
/680ページ
 結局、いい考えも浮かばないまま、日付は変わる。そして、長くて退屈な授業が終わり、クラブ活動の時間がやってくる。  いつものように部室に行くと、千春は他の同級生とすでに対局を始めていた。香代子は部室の中を見回す。だけど、長嶺の姿はそこにない。  まだ来てないのかな……。  どうしたらいいんだろう……?  このまま待ってたらいいのかな……?  そんなことを考えていると、たまたま対局相手のいなかった男の先輩が寄ってくる。 「佐々木、対局相手がいないなら、俺が相手するけど?」  先輩の誘いに、香代子はどう答えていいのかわからず戸惑う。 「あの……えっと……」  香代子が言葉に詰まったそのとき、部室の扉がゆっくりと開いた。そして、長嶺が姿を現す。 「ごめん、佐々木。待たせた?」 「い、いえ。私もいま来たばかりなんです」  そんなやり取りを見て、寄ってきていた先輩は他の部員の対局を観戦しに行ってしまった。  良かった……。  昨日の言葉、嘘じゃなかったんだ……。  長嶺先輩と対局なんて夢みたい……。  香代子は頭の中で勝手に舞い上がる。
/680ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1817人が本棚に入れています
本棚に追加