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「じゃあ、始めようか」
長嶺の言葉に、
「はい!!」
と、香代子は元気よく返事する。
二人は碁盤をはさんで向かい合う。先手は香代子。打ちながら、長嶺が手加減してくれているのが、香代子にもわかる。そして、長嶺は、ときどき香代子にアドバイスを与えてくれる。
本当はそれをきちんと理解して次に活かさなければならないことはわかっているけれど、舞い上がってしまっている香代子の頭には何も入ってこない。
「ほら、この場面ではそこでハネるんじゃなくてこっちにノビないと、これらの石が死んじゃうよ?」
長嶺の言葉に、香代子は石を打ち直す。
そんなことをしているうちに、あっと言う間に時間が過ぎてゆく。他の部員たちは対局を終了し、あるいは対局を中断して、下校してゆく。一人減り、二人減り、気がつくと部室には香代子と長嶺のだけが残されていた。
そして、香代子はふとそんな状況に気づいた。
えっ!?
二人っきり!?
これって告白のチャンスってこと?
そんなことを考えていると、碁盤を指しながらアドバイスしてくれていた長嶺が、
「ちゃんと聞いてる?」
と、少し呆れたような表情を浮かべる。
「は、はい!! 聞いてます!!」
香代子は慌てて取り繕う。
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