番外編第1章 過去・香代子

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 そんな佳代子を見て、長嶺はクスッと笑う。 「気がつけば、もう僕らだけしか残ってないね」 「あ、はい……」 「それに、もうこんな時間だ」  香代子は時計に目をやる。時計の針は、間もなく七時を刻もうとしていた。七時を過ぎると、学校は施錠されてしまう。 「続きは明日にしよう」  長嶺はそう言うと、碁盤をそのままに、カバンを持って立ち上がる。香代子もそれに続いた。  急ぎ足で廊下を歩き、二人は学校から出る。校門を出たところで、長嶺が言った。 「帰る方向一緒だろう? 途中までだけど、一緒に帰ろう」 「はい」  香代子は長嶺と並んで歩く。だけど、その場に相応しい会話が、香代子には思いつかない。  長嶺に話しかけたい気持ちはあるのに、言葉が口から出てこない。  どうしよう……。  ずっと黙ってたら変だよね……。  何か喋らないと……。  でも、何を?  そんなことを考えながら、俯きがちに歩いていると、 「僕と一緒にいてもつまらないかな?」  と長嶺が言う。 「そ、そんなことありません」 「そっか。良かった」  長嶺はハハハと小さく笑う。
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