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そんな佳代子を見て、長嶺はクスッと笑う。
「気がつけば、もう僕らだけしか残ってないね」
「あ、はい……」
「それに、もうこんな時間だ」
香代子は時計に目をやる。時計の針は、間もなく七時を刻もうとしていた。七時を過ぎると、学校は施錠されてしまう。
「続きは明日にしよう」
長嶺はそう言うと、碁盤をそのままに、カバンを持って立ち上がる。香代子もそれに続いた。
急ぎ足で廊下を歩き、二人は学校から出る。校門を出たところで、長嶺が言った。
「帰る方向一緒だろう? 途中までだけど、一緒に帰ろう」
「はい」
香代子は長嶺と並んで歩く。だけど、その場に相応しい会話が、香代子には思いつかない。
長嶺に話しかけたい気持ちはあるのに、言葉が口から出てこない。
どうしよう……。
ずっと黙ってたら変だよね……。
何か喋らないと……。
でも、何を?
そんなことを考えながら、俯きがちに歩いていると、
「僕と一緒にいてもつまらないかな?」
と長嶺が言う。
「そ、そんなことありません」
「そっか。良かった」
長嶺はハハハと小さく笑う。
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