1817人が本棚に入れています
本棚に追加
/680ページ
そして、いよいよ長嶺が帰る方向との分かれ道がやって来た。
「じゃあ、気をつけてな」
長嶺はそう言うと、右手を小さく振って、自分の家の方向に歩き出す。
「長嶺先輩、待ってください!!」
香代子の口から言葉が飛び出す。どうしてそんな言葉を発してしまったのか、香代子自身にもわからない。ただ、このままここで別れるのが嫌だったことだけは確かだ。
「どうした?」
振り返ってそう言うと、香代子の所まで戻ってきた。
えっと……。
どうしよう……。
ああ、私、何で呼び止めちゃったんだろう?
考えていると、顔が熱くなってくる。
「何かあったかい?」
長嶺が笑顔で香代子の言葉を促す。
「え、あの、長嶺先輩……」
「うん、どうした?」
「あ、あの、好きです」
言った瞬間、香代子は一瞬にして体中から汗がふき出した。
ああ、どうしよう……。
ついに言っちゃった……。
だけど長嶺はキョトンとした顔で香代子を見ている。
「好きって、何が?」
長嶺が尋ねてくる。
最初のコメントを投稿しよう!