番外編第1章 過去・香代子

9/18
1817人が本棚に入れています
本棚に追加
/680ページ
 そして、いよいよ長嶺が帰る方向との分かれ道がやって来た。 「じゃあ、気をつけてな」  長嶺はそう言うと、右手を小さく振って、自分の家の方向に歩き出す。 「長嶺先輩、待ってください!!」  香代子の口から言葉が飛び出す。どうしてそんな言葉を発してしまったのか、香代子自身にもわからない。ただ、このままここで別れるのが嫌だったことだけは確かだ。 「どうした?」  振り返ってそう言うと、香代子の所まで戻ってきた。  えっと……。  どうしよう……。  ああ、私、何で呼び止めちゃったんだろう?  考えていると、顔が熱くなってくる。 「何かあったかい?」  長嶺が笑顔で香代子の言葉を促す。 「え、あの、長嶺先輩……」 「うん、どうした?」 「あ、あの、好きです」  言った瞬間、香代子は一瞬にして体中から汗がふき出した。  ああ、どうしよう……。  ついに言っちゃった……。  だけど長嶺はキョトンとした顔で香代子を見ている。 「好きって、何が?」  長嶺が尋ねてくる。  
/680ページ

最初のコメントを投稿しよう!