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第7章 現在・僕
……ズキン……ズキン……。
頭が痛い。
気分が悪い。
吐く息が酒臭い。
完全な二日酔いだ。
目を覚ました僕は、ベッドの上で上半身を起こして、頭をさする。隣に桜子の姿はない。
どこに行ったんだろう……?
そう思いながら、部屋の中を見回す。ふと、時計が目に入る。時刻は午前10時48分。僕は一気に青ざめる。
完全に遅刻だ。それも、言い訳できないほどの大遅刻だ。
もしかして、桜子は僕を起こさず、一人で会社に行ったのか!?
僕は慌ててベッドから飛び出し、床に散らばった自分の服を集める。そのとき、トイレの方から水の流れる音が聞こえてくる。
少し間を置いて、下着姿の桜子がトイレの中から姿を現す。
「やっと起きたの?」
桜子は僕の方に近寄りながら言う。
「うん。完全に寝過ごした。この時間は完全にマズいな……」
「心配しなくていいよ」
「どういうこと?」
「会社には、私が休暇の連絡しといたから」
「えっ!? でも、さすがに君の声だとバレるだろ?」
「バレないように、ちゃんと声色くらい変えるわよ。それに、会社の電話はナンバーディスプレイだから、あなたの携帯電話で連絡したし」
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
桜子はそう言って微笑む。
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