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第9章 過去・美穂
大学1年生の冬。秀明と付き合い始めて半年ほどが経ったその日、美穂は初めて秀明以外の男に抱かれた。
その日、美穂はサークルの忘年会に参加していた。ウクレレ同好会。それが、美穂の所属していたサークル。音楽に興味のない秀明は、そこにはいない。
サークルの部員の大半は幽霊部員だが、飲み会となると一気に部員が集まる。その日も、いつもでは考えられないくらいの部員が参加していた。そのおかげで、忘年会は派手に盛り上がる。
美穂も普段より、酒を飲むピッチが上がる。気がつけば、普段は決して飲まないような量の酒を飲み干していた。
午後10時。忘年会が終わる。会費を精算して、サークルの友人と楽しく話しながら店を出る。
部員たちはしばらく店の前にたむろして騒いでいたが、1人、また1人と、家路につき始める。だんだんと、部員の数が減ってゆく。
「じゃあ、そろそろ私も帰ります」
美穂も帰宅を宣言し、家路に就こうと一歩踏み出す。その瞬間、美穂はよろけて、大きくバランスを崩す。
「あっ!!」
声をあげた瞬間、誰かが身体を支えてくれた。体勢を立て直し、振り返ってみると、1つ上の学年の木島昭平が、美穂の身体をしっかりと支えてくれていた。
木島は後輩の面倒見がよい先輩だ。美穂と同じ経済学部で、試験前にはノートをくれたりする。決して顔立ちがいいわけではない。スタイルも良くはない。だから、カノジョがいるという話も聞いたことがない。それでも、決して悪い人じゃない。
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