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第11章 現在・僕
美穂の男性遍歴を聞いて、頭に残ったのは、相手の名前くらいだ。
木島昭平。
内田啓介。
桃原悠斗。
鈴木浩介。
吉本修平。
まさか、その5人の中に、親友だった浩介の名前まであるとは思わなかった。たしかに浩介は、ある時から急によそよそしくなった。大学卒業間近。そう、あの日だ。美穂と肉体関係を持ったからこそ、浩介はよそよそしくなった。
美穂は僕を裏切っただけでなく、僕から友人も奪ったのだ。
このまま綺麗サッパリ別れてしまえればどんなに楽だろう……。
僕は頭を抱える。だけど、美穂に対する愛情は、そんなに簡単に消えてなくなりはしない。簡単に消えるのなら、こんなに苦しまなくて済む。
とにかく今は、気持ちを切り替えなければならない。
時刻は午後1時過ぎ。もう少ししたら、町村佑樹の家に行かなければならない。昼食はとっていないけれど、お腹は空いていない。美穂の話は衝撃が強すぎて、食欲など消えてなくなった。
「もう、隠してることはない?」
僕は尋ねる。
「うん、ないよ」
「君は町村佑樹とキッパリ別れる。いいね?」
「…………わかった……」
美穂の言葉の歯切れが悪いのが苛立たしい。だけど、美穂ももう、諦めた様子だ。
「今後はもう二度と、浮気なんてしないこと。わかってるよね?」
「わかってる」
美穂も今度は素直に頷く。
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