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第2章 過去・美穂
美穂の携帯電話に、大学時代の友人、神村智子から電話がかかってきたのは、二月の末のことだった。
ちょうど洗濯物を干し終わり、一息ついたところにかかってきた電話に出ると、智子の元気な声が電話から聞こえてくる。
「美穂、久しぶり~。元気にしてる?」
「うん、元気にしてるよ。ほんと、久しぶりだよね~。仕事、忙しいの?」
「うん、結構忙しいよ。美穂は?」
「私は、毎日変わらずよ。専業主婦だし」
「そっかぁ……」
「うん。それより、今日は突然どうしたの?」
「あ、そうだそうだ。本題を忘れるとこだったわ。私ね、今度、東京の本社に転勤することになったの」
智子の口調は明るい。決して、転勤を嫌がっているような雰囲気ではない。
「栄転? おめでとう」
「ありがとう。そんなふうに言ってくれるのは、美穂だけだよ」
「あはは、そんなことないでしょ?」
「実際、そんなことあるんだってば……。まあ、それは置いておくとしてさ、東京に行っちゃったら、なかなか会えなくなるじゃん? その前に一回会いたいなと思って電話したの」
「あ、私も会いたい。しばらく会ってないし、これからはなかなか会えそうにないし」
美穂は智子の言葉に賛同する。
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