第12章 現在・佑樹

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第12章 現在・佑樹

「おい、ちょっと様子見てこいよ」  拓也がベッドの上から言う。その言葉を受けて、佑樹が立ち上がる。 「んじゃ、ちょっと見てくる」  佑樹はそう言うと、部屋を出ていく。佑樹は5分くらいマンションの周りを見て回る。美穂と旦那の姿はない。それを確認して、部屋に戻る。 「大丈夫だ。ちゃんと帰ったみたいだ」  佑樹は拓也に報告すると、冷蔵庫から缶ビールを3本取り出す。そして、1本を拓也に、もう1本を詩織と名乗っていた女に渡す。  3人はほとんど同時に栓を開ける。  プシュッ!!  部屋の中に、栓を開ける音が響く。 「とりあえず、助かったよ。サンキュな、拓也」  佑樹はそう言って、ビールで喉を潤す。  そして、佑樹は続けて、 「沙紀もありがとう」  と、詩織と呼ばれていた女に向かって言う。 「別にいいよ。気にしないで」  沙紀がニコリと微笑む。 「それにしても傑作だったよな。あの、旦那の落ち込んだ顔」  拓也が声を上げて笑う。それにあわせて、他の2人も声を上げて笑う。 「俺の筋書き通りにいってよかったよ。まだまだいろいろ細工はあったんだけどな」  拓也が自慢げに言う。 「ホント、拓也のおかげだよ」  佑樹が改めて拓也に礼を言う。 「でも、ホントに手が込んでるよな。美穂がクローゼットとか開けたことないのをいいことに、沙紀の服とか詰め込むんだから」 「まあ、旦那がその程度で騙されるヤツでよかったよ」 「でも、沙紀に偽名を名乗らせて、お前の妹に仕立てあげた理由は?」  佑樹が尋ねる。
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