1816人が本棚に入れています
本棚に追加
/680ページ
第12章 現在・佑樹
「おい、ちょっと様子見てこいよ」
拓也がベッドの上から言う。その言葉を受けて、佑樹が立ち上がる。
「んじゃ、ちょっと見てくる」
佑樹はそう言うと、部屋を出ていく。佑樹は5分くらいマンションの周りを見て回る。美穂と旦那の姿はない。それを確認して、部屋に戻る。
「大丈夫だ。ちゃんと帰ったみたいだ」
佑樹は拓也に報告すると、冷蔵庫から缶ビールを3本取り出す。そして、1本を拓也に、もう1本を詩織と名乗っていた女に渡す。
3人はほとんど同時に栓を開ける。
プシュッ!!
部屋の中に、栓を開ける音が響く。
「とりあえず、助かったよ。サンキュな、拓也」
佑樹はそう言って、ビールで喉を潤す。
そして、佑樹は続けて、
「沙紀もありがとう」
と、詩織と呼ばれていた女に向かって言う。
「別にいいよ。気にしないで」
沙紀がニコリと微笑む。
「それにしても傑作だったよな。あの、旦那の落ち込んだ顔」
拓也が声を上げて笑う。それにあわせて、他の2人も声を上げて笑う。
「俺の筋書き通りにいってよかったよ。まだまだいろいろ細工はあったんだけどな」
拓也が自慢げに言う。
「ホント、拓也のおかげだよ」
佑樹が改めて拓也に礼を言う。
「でも、ホントに手が込んでるよな。美穂がクローゼットとか開けたことないのをいいことに、沙紀の服とか詰め込むんだから」
「まあ、旦那がその程度で騙されるヤツでよかったよ」
「でも、沙紀に偽名を名乗らせて、お前の妹に仕立てあげた理由は?」
佑樹が尋ねる。
最初のコメントを投稿しよう!