第17章 現在・佑樹

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第17章 現在・佑樹

 カーテンの隙間から、夕陽が差し込む。暗い部屋の床に、光が一筋の線を描く。佑樹はベッドに横たわり、天井を眺める。  何もない天井。何をする気も起こらない。  先日、佐々木が尋ねてきたのを除けば、ほとんど人とも会っていない。佐々木と会ったのも、夢じゃないかと思えるくらいだ。だけど、夢じゃないことはわかっている。  佐々木と話した内容もハッキリと覚えている。佐々木とセックスしたことも覚えている。どんな体位で、何回ヤったかも。  あれ以来、佐々木からの連絡はない。もしかしたら、佐々木の勘違いだったのかもしれない。そんなふうにも思える。  目を閉じると、相変わらず美穂の姿が脳裏に浮かぶ。美穂に会いたいという気持ちは、高まっていくばかりだ。  佑樹は携帯電話を手に取る。そして、メールと電話の着信履歴を確認する。だけど、メールは届いていないし、電話もかかっていない。  佑樹は深くため息を吐く。それから、目を閉じて、もう一度ゆっくりと息を吐く。微かな眠気が、佑樹を包む。  このまま眠ってしまおう……。  眠ってしまえば、何も考えずにすむ……。  佑樹は眠気に身を任す。そのとき、携帯電話が鳴り始めた。佑樹は慌てて携帯電話を手に取り、ディスプレイを確認する。
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