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第21章 現在・僕
午後七時。僕は約束の時間に駅前の喫茶店に入る。町村佑樹はすでに奥の方に座ってアイスコーヒーを啜っていた。
僕は町村佑樹と向かい合って座り、ホットコーヒーを注文する。
「で、話って何?」
町村佑樹がさっそく切り出してくる。
「桜子のことだと言っただろう?」
「それはわかってる」
町村佑樹はぶっきらぼうに答える。
「今日、君を美穂に合わせるに当たって、一つだけ条件がある」
「条件? あんた、昨日そんなこと言ってなかったじゃないか!? 今更になってズルいぞ!!」
町村佑樹の上げた大きな声に、周りの客の視線が僕たちの方に集まる。
「まあ落ち着けよ。そんなに難しいことじゃない」
「どっちにしてもズルいだろう?」
「でも、条件を飲まなきゃ、美穂に会うことすら君にはできないだろう?」
僕が言うと、町村佑樹は黙り込み、それから、
「とりあえず、聞くだけ聞いてやるよ」
と、かなり上から目線で言い放った。
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