第25章 現在・桜子

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第25章 現在・桜子

 最悪だ……。  何でバレてるの……。  誰がバラしたの……。  聞こえよがしに妊娠の噂話をする同僚たちにときどき視線を向けながら、桜子はパソコンのキーボードを叩く。だけど、噂話が気になって、仕事に集中できない。 「なんかさ、勢いでヤッちゃってできたらしいよ」 「えっ!? ウソッ!! そんなんバカじゃん」 「相手は彼氏ってわけでもないし、もちろん婚約者ってわけでもないらしいよ」 「マジで? 意外とヤリマンだったんだ」 「ま、自分がちょっと美人だからって調子に乗ってるからこんなことになるのよ」  そんな噂話が、席に座っていてもコソコソと桜子の耳に届いてくる。目をかけてくれていた上司も、朝から厳しい目付きで桜子を見てくる。 「君原くん、ちょっといいかい?」  見かねたのか、上司が桜子を呼ぶ。 「はい」  桜子が立ち上がると、 「ここじゃ、なんだから」  と、上司も立ち上がり、別の部屋へと移動する。桜子は黙ってその後をついて行く。  いったい何を言われるんだろう……。  桜子の胸の中は、不安で満たされてゆく。  上司はカンファレンスルームに入ると、椅子に座り、桜子にも座るように促す。そして、桜子が椅子に座ると、さっそく話を切り出す。 「君原くん、噂のことだけど……」 「はい」 「本当なのかね?」 「……お答えしないといけませんでしょうか?」  桜子は一応の抵抗を試みてみる。
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