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番外編第1章 過去・香代子
高校のクラブ活動。香代子は碁盤を前に、黒い石をジャラつかせる。
「ねえ、香代子、まだ?」
目の前の同級生、千春が声を掛けてくる。
「ちょっと待ってね」
香代子は答える。
今日は長嶺先輩も来てるし……。
いいところ見せたい!!
今度の大会にも出たいし……。
負けられないのよ!!
香代子はそんなことを考えながら碁盤を睨む。形勢は香代子がやや不利。だけど、まだ逆転できない訳じゃない。香代子は逆転の一手を必死に考える。
「やってるね」
そんな香代子に、突然、長嶺が声をかけてきた。
「はい、頑張ってます」
香代子は力強く答える。
長嶺は世間的に言って、決して顔立ちの整っている方ではない。だけど、性格は明るく、誰にも平等に優しく、非の打ち所がない。
香代子はそんな長嶺に惹かれていた。長嶺と付き合うことができたら、どんなに素敵だろうかといつも考えてしまう。
だけど、なかなか告白にまでは至らない。どうしてもフラレたときのことを考えてしまう。そうすると、なかなか一歩が踏み出せない。
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