幼稚園の魔術師

5/116
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
 「その本はなんですか?」  ツクルモノはペイジが召喚した本を手にとり、パラパラと捲ってみるが、白紙ばかりだった。  「小説、です」  「ふむ、小説」  小説というかたちのものは召喚出来ているが、肝心の物語が一行も書かれていない。やはりペイジもこの本のように発展途上だとツクルモノは頷いた。  「男の子は、伝説の武器とかドラゴンとか召喚したがるものだけど、小説とはまた珍しい。一枚の画用紙から数百枚の紙を出すのも初めてみるよ。どんな物語を『書く』つもりだったのかな」  「書くっ?」ペイジはドキリとしてツクルモノに訊ね返した。  「読むつもりなら、文字が書いてあるはずですよ。それがないと言うことは、これからを自分で作る予定だったのでは? ペイジくんはひょっとすると作家志望では......?」  「ツクルモノ先生、どうしてそれが?」  「飾り物を召喚したココさんのものも、人形を召喚したトミカさんのものも、お店のものですし、買うにしてもとても高いんですが、彼女たちはそれを欲しいと思っていたから、画用紙に書いたんでしょう。きっとペイジくんも小説はこれまでたくさん読んできて、自分も書きたいと思ったのではないですか」  「すごい......」ペイジはツクルモノが全てを言い当てたことに目を丸くした。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!