リーディ

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リーディ

…ああ言う場面で本音って出るものなんだよな。 レオノラが泣きながら走り去った後、確かに罪悪感みたいなものはあったが、それよりも今しっかりと手を繋いでいるステラのほうが 百倍気になっていた。 しかしその当の彼女は、もう一つの手を使ってそっと繋いだ手を解かせて、 「ごめんね」 と辛そうな顔で立ち去ったのだ…。 俺は即座に追いかけようとした。 ーもっと強くその手を離さずにいたら。  その時、お待ちください、王子と呼び止める声がした。  声の主はセシリオだった。 「セシリオ、あとで話は聞くから今俺を行かせろ。」 「なりません。」 断固とした強い口調。こういうセシリオは滅多にない。すると、いつの間にかメイを治療していた姉がそれを終えるとこう言った。 「とりあえず、セシリオの話を聞くのよ」 と。 「そうそう、リーちゃんあたしがステラを追っかけるから心配しないでよ。」 完全に身体が回復したメイがにっこり笑った。 「姉さん大丈夫?」 ウも少し心配気だが、顔色の良くなったメイを見て安心した模様だ。  俺は頷いて、後ろ髪をひかれながらもセシリオと一緒に別室へ赴いた。 王の間の横の控室にて。 「なんだ?話って」  少々落ち着きもせず、俺はセシリオに問うた。見当はついている。だから俺は先に俺の考えをもう一度言った。 「ステラのことか?ならあそこで皆の前で言った通り。俺は彼女のことを本気で愛している。この使命が終わったら、妻に迎えたい。」 「……。」 セシリオの神妙な顔。 やはりステラのことだったんだな。 「別に俺は王位継承者でもなんでもない。国政に関らないつもりだし、ひっそりと城内に別宅を構えて暮らしてもいい。」 「…なりませぬ。」 セシリオがようやく口を開いた。 「城内の人間の反応を考えるとってことだよな?」 「それももちろんありますが、それだけではありません。」 「本当か?」  想定内の反応。  国民全体というより、少なくとも城内の人間はあの魔性の襲撃で一番被害を被ったのでステラを妻に迎えたら、反感は買うだろう。  でも彼女は一方で滅びたとはいえ、俺と同等の王家の末裔でもあるのだ。  しかし、セシリオの瞳を見るとどうやら、それだけではないってことは本当の様だ。むしろとにかく心配でたまらないという様子である。 「では、なんだ?」 セシリオは、少し目を伏せてため息をすると、再び俺のほうを見て、覚悟した面持ちで言った。 「彼女はマレフィック・ミックスですよね…。」 「そんなのわかりきっているだろう?」 「王子はマレフィック・ミックスはどういう生態なのか御存じないですよね・・・?とてつもない魔力などを秘めているとかそう言うこと以外には。」 「で?何が言いたいんだ?」  つい、俺はイライラした口調でセシリオを問い詰める。  俺らしくない。一刻も早くステラのもとへ駆けつけて抱きしめたいんだ。 その様子を見たセシリオは決心した様子で言葉を紡ぎだした。 「マレフィック・ミックスは…短命なのです。」         キャロル 「マレフィック・ミックスは、ベネフィックとは逆で命が短いのじゃ…。」 キャロルは驚いたように目を見開く。 その様子を見て、付け加えるようにエメラインが告げた。 「恵まれたという意味である私のようなベネフィック・ミックスは長寿であることにも由来しているの…。」 「いかにも。その逆がマレフィックなのじゃ…。はるかに強い魔力を持っていても半分は人間。魔力に耐えられない肉体は、せいぜい30年生きられれば良い方じゃ。」 ―…ステラが…ああ…神様……! キャロルは祈るように強く目を閉じた。 「一方で、強大な魔力を持つ現魔王に立ち向かえるのも彼女だけなのじゃ・・・。キャロル、そなたのほかに4人の封印を解くものがおるじゃろう?それぞれのペンダントに 呼応している希望のかけらじゃ。」 「…はい。」 「そなたらもそれぞれルーツがあるはずじゃ。あるものは賢者の末裔、あるものは屈強な戦士の血だったり様々じゃ。そしてそなたは…」 長老は穏やかな眼差しでキャロルを見つめて再び言ったのだ。 「そなたは古の巫女の血を引いておる。そう自然と調和して癒しを施すその力。それを見込み儂はそなたの力を更に引き出そうと思う…。」 ―私が…巫女…?? キャロルは瞳を見開いた。 ―私は私自身のアイデンティティーにまったく興味も抱かず、ある意味前を向いて生きてきたけど…。  キャロルはふとそう思った時に、長老が何やらルーンを紡ぎ出した。  すると森のすべての息吹が集まり長老の小さな掌に納まり、それを彼女の胸の前で放出した。キャロルはその瞬間、それらの生命の力が自分自身の潜在的な魔力を漲らせ、まるで身体の一部に馴染んでゆくような感覚を覚えた。 「これは…?」 「わしが森の妖精、精霊すべての力を呼び寄せてそなたに託した。どういう時に使えるかは修道女であるそなたにはわかるじゃろう。 ただし、一度のみじゃ。」 キャロルは頷いた。 ―授けていただいた力…大切にしないといけない…。 その様子をエメラインと二人の妖精たちは静かに見守っていた。
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