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コウ
どぉん・・・と轟音が鳴り、
姿はまるで岩山の如く、
ものすごい地響きとともに現れた岩の怪物、ティタニオン…。
僕らは身構えた。
「リーディ、こいつの守備力相当なもんだと。」
「ああ。魔法で下げるぜ。」
「呪文詠唱の時間稼ぎは任せて!」
姉さんが持ち前の素早さでティタニオンを挑発する。
「こーゆー岩のバケもん、ってのは…」
ひらりひらりと荒れ狂う岩の拳を避けて
「核(コア)を見つければ楽勝!!」
すかさず蹴りを返す。ちょうどコアに当たったようで、ティタニオンの拳が崩れる。
そして丁度リーディの攻撃補助呪文が発動して、奴の守備力が下がる。かけ終わった否や
彼は素早くブロードソードを抜いて動きを封じるためにティタニオンの足の付け根を斬りつけた。
あのリンデルの半漁人と違って知能は低そうだから、変な呪いとかは掛けてこないだろう。動きも鈍重だ。でも…力は半端ない。一気に片付けないと…。
いくらリーが守備力を下げても僕が使う飛び道具はあまり役には立たなさそうだ。
さて、僕はどうするか?
二人が少しずつティタニオンを追い詰めている間に、僕は背嚢を降ろし中の物を出す。
「これを組み立てておこう」
そう呟き、僕は素早く部品を組み合わせ始めた。ものの20秒はかかる。今のところ、二人のほうが優勢だ。でも体力は数日の洞窟攻略で落ちているから油断はできないし、一刻を争う。
「わぁっ!」
姉さんが投げ飛ばされた。ずしゃりと岩場の地面に叩きつけられる音。僕は即座に駆け寄ってあげたかったが、衝動を押しとどめて、組み立てに集中する。
リーディが再び爆発呪文を発動する。ようやく奴の頭が吹っ飛んだ。しかし一方で、この空間の出入り口付近の岩が爆発の衝撃で崩れる…。
「…何発かこれをかませば、倒せそうだが。」
おそらく魔力が持たないのと、洞窟が崩れるのを彼は懸念しているのだろう。リーディは悔しそうに化け物を睨みつけている。急がなければ…。焦らない様に、でも素早く確実に手を動かしながらも僕は二人の様子をちらと見る。
肩で息をしているリーディ。魔物がのた打ち回っている間に素早く姉さんを回復する。
彼の戦い方は非常に効率的だ。
あと部品を一つ…。
その時、のた打ち回っていた怪物が即座に、
姉さんとリーディに向かって頭と足の無い状態で襲いかかってきたのだ!
「!!」
同時に僕の組み立てていた武器がかちりと部品が組み合わさり、完成した…!
僕はそれがきちんと組み立てられているか確認するや否や弾を仕込んで、奴のコアがありそうな胴体の中心部に狙いを定め…
―集中して……落ち着け…二人に今襲いかかっていても、奴は鈍重だ。
僕は自分自身に言い聞かせる。
まるでスローモーションのようにゆっくりと彼らにその岩の体を押し付けようとしてきた瞬間、僕は
「二人とも伏せて!」と叫んだ数秒後、
引き金を引いていた。
ズガーーーン!!
銃声の後の咆哮が聞こえる。
それと共に奴の辛うじて生きていた胴体は、
バラバラに砕け散り…二人の頭上に砂と化して降り注いだ。
………
…………
沈黙…
僕も呆然と、銃を構えた状態で立ち尽くしていた。
二人はちゃんと伏せていて無傷ではあるみたいだけど大丈夫かなぁ?
姉さんに覆い被さるように伏せていたリーディが、まずゆっくり起き上がる。
「…どうにか」
「助かったみたいね…」
リーディは無造作に頭にかかった魔物の残骸を払うと息をつく。姉さんもゆっくり起き上った。
「悪いね、リーちゃん」
覆いかぶさって守ってくれたことに対するお礼だ。
「ああー回復してる時に奴が来たからな」
ふふ。全く下心の無い守り方だったから僕だって嫉妬はなかった。
そしてリーディは続けて僕に言ったんだ。
「銃の威力ってすごいな…」
「あ、ああ。実戦に使うのは初めてで、正直撃った僕も驚いている。」
うん。役に立てたのはうれしいけど…それ以上に自分で言うのもなんだけど、この武器の扱いって威力を考えると使う者を選ぶと痛切に感じた。
さて。
僕は黙々と銃を分解して、片づけていた時に、だ。
「見て…!」
姉さんが指差した方向は、祠。
そこに1人の男性が立っていたのだ。
エターナル・メタルでできた鎧を身に着けて、両手にエターナル・メタルで造られた
長剣を握りしめている。
―我は金の神インバー…邪悪なものに封印されていた我を救ってくれたことに礼を申す…。
髪は黄金、屈強な戦士と言う出で立ちのその男は神だった…。
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