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コウ(続き)
インバー神…。
屈強な戦士の出で立ち。
エターナル・メタルの輝き…。
カナロア神は優しげな水(海)の女神様だったけど、金の神は鋭い眼光すら感じる。
―封印を解く者たちよ…。我の力を与えんとする…。が、しかし、そなたたちの中に
我の金の力を受け継ぐものはいないようだ…。
え?
僕らは戸惑った。
せっかくここまでやってきたのに??
リーディも姉さんも同じように唇を噛みしめて、インバー神を見つめている。
―再度。ここへ訪れるが良い。その時必ず我の力を、与えんとす…。
そして、インバー神はそう言い残し、祠の中へと消えて行ってしまったのだ…。
「なんだよ、あれ…。」
リーディがやってられないといった風に片手を額にやる。
「仕方ないよね。うちらの中に要は金の神に呼応するペンダントを持つ者が居なかったってわけだし。」
姉さんはクスリと皮肉った様に笑う。
となると、それを持つ者は、キャロルかまだ見ぬ最後の一人の仲間ってことなのか。
僕は項垂れた。
「とりあえず、このエターナル・メタルの原石は持ち帰れないもんかしらね?」
「この鉱脈はとても硬いと聞くけど…。」
そう、砕くには「王族の道具」が必要と訊いた。でもひとかけらだけでも持ち帰られたら…何かのヒントになるかもしれない。
その僕の表情をを察したのか、姉さんがニヤリと笑う。
「ここは可愛い弟のためにあたしが一肌脱ごうか?」
「え?」
姉さんは先ほどの戦闘でリーディに回復をしてもらったと言えども…疲労困憊の状態で立ち上がって、構えた。ってまさか…この構えは…。
体力を身体中に漲らせて、放つ拳。
そう、姉さんはありきたりの生命力を拳に注ぎ込んでる…。リーディも姉さんの異変に気が付いて止めようとしたが。
「破ッツ!!!」
気合の言葉と共に鉱脈へ繰り出された拳は…。少しだけ鉱石にヒビを入れたものの、
割れるまでに至らなかった…。
ポロリと僅かな欠片が、地面に零れる。
姉さんは拳を繰り出した構えのまま…そのまま倒れた。
「メイ!」
リーディが姉さんを揺り起こし、回復呪文を掛ける。処置が早くて意識は戻ったようだけど、リーディが静かに呟いた。
「あと魔力がわずかしかない…。」と
リーディ
俺は、メイにラスト一発の回復呪文をかけると、呟いた。魔力がほとんど無いということを。
―さて、どうしたもんか…。
魔力もほとんどなく、一刻も早くここを出ないとメイが危ないし。かろうじて残ってる魔力を絞って脱出呪文で洞窟の外へ出たところで、こんなボロボロ状態で船に乗っても、城に戻られる保証もない。休める町や村もあの周辺には無かった。
途中結界を張って休めばいいという話だが、兵糧が切れている。
(4日分しか用意してなかった。しかも予備入れてこれがそれぞれ手分けして持って行ける最大の量。)
…しかもここにまた金の神のペンダントの持ち主を連れて行かなければならないし、
「王族の道具」を手に入れてエターナル・メタルの鉱石も取りにいかないといけない。
その時、またあの過酷な洞窟を引き返すのか?ここまでたどり着くまでの苦労を思い出すと眩暈がしそうだ。
ちらっとコウに抱きかかえられたメイを見る。一刻も早く安全な場所で休ませないと、まずい。
―さぁ、どうする?
こういう時こそ頭をクールダウンして、考えるんだ…。
そして俺は、閃いた。
…一か八かで魔方陣で一気に城に戻れるか?ってことを。
俺にとっちゃ結構な賭けだ、これ。なぜなら俺は魔法陣が苦手だったからだ。中途半端な王子はここにも健在である。
…でもそうも、言ってられない。
これさえうまくいけば後の懸念は一気に払拭されるから。
俺は一人頷くと、剣を引き抜いて魔法陣を描き出す。
「リーディ?」
コウが不思議そうな顔で俺を見る。
俺は構わず地面に陣を描き続けた。
そうしてものの10分、描き終わって二人を呼んで説明をする。コウも合点が言ったように頷いてくれた。
「僕も途方に暮れていたんだ。この先どうしたらって。今までの苦労が水の泡になるって…。リーディ、やっぱり君に来てもらってよかった…。」
「あー、そのセリフはとりあえず成功してからだな。」
俺は魔法陣の中心部にブロードソードをぶっ刺して、(本来なら杖を突くんだが)
二人も近くに寄らせて、目を閉じた。
城の魔方陣部屋をイメージする…。見えてきた。でもそれだけではダメだ。移動先の場所の記憶を呼び起こすことが、成功の秘訣なのだ。
だから、皆に掴まれと言った瞬間、俺は4年前のことも思いだす。
それが城に纏わる一番新しい昔の記憶だったからだ。
魔法陣から光が出てきたのか
驚いたコウの小さな叫び声。
さぁ、城へ戻るんだ・・・・!!!
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