ステラ

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ステラ

ゆっくりと、足を進めるリーディ。 思わず私は顔を上げて、彼を見た。 レオノラさんも同時に。 そして、  リーディは私の横に並ぶと、そっと手を取った。びくっと、身体が反応した。  それに構わず、彼はレオノラさんの方を真っ直ぐ見て、口を開いた。 「レオノラ。」 「…リーディ?」 レオノラさんの顔が不安げに揺れる。 しかし、彼はゆっくりとした口調で話し出す。 「レオノラも俺も、同じように辛い目に遭ったから、魔族への憎悪は今でも消えない。 だから俺はレオノラの気持ちはわかる。でも、あのときは、レオノラに甘えてしまったこともあったけど…結局傷の舐め合いだったのかもしれないすまないと思う…。」 「…リーディ、いや…謝らないでよ…。」 レオノラさんの顔から再び涙が溢れる。 それを見た私は再び胸が痛くなるのを感じ… だけどリーディは話し続ける。 「けれどな、ステラはステラであって、魔族がどうとかそういうのもひっくるめても、俺はこいつのことが好きなんだ。事実、こいつがいなかったら俺は立ち直れなかった。」 そして、私の手が強く繋がれる、それは切ないほどに。 「やめて!!」 ―そう、私達を繋いでいるものは物理的にはストイックなこの手と手だけが唯一。 「勝手だと思うだろうけどこれ以上、こいつのことを侮辱するようなことを言ったら レオノラであっても、許さない。」 ―けれども、心と心は、繋がっているんだ…。 レオノラさんはうつ向いて泣いて立ち去った。 でも何故心の中はもやもやしっぱなしで辛いの?                     ステラはメイの気持ちがありがたかったし、リーディの想いも嬉しかった。 しかし、レオノラのことを思うと少し気持ちがくすぶる。その同情心こそ、一番レオノラを傷つけるものだとわかっていたのであえて触れなかったのだが、モヤモヤがあったのは事実だ。  それに、リーディは、ああ言ってくれたけれども…この国は魔族の襲撃が激しかった地域で、少なからずともわだかまりは消えないと思う。   ―だから私でいいのかなって思ってしまう…。   そしてそれ以上に、わかっていてもショックだった言葉。 「リーディに抱かれたことあるの?」 「昔はレオノラに甘えたこともあるけれどそれは傷のなめ合い」  ステラの心の中でリフレインしていて心が鷲掴みされたようになる。  あたりまえだけど、気持ちが通じ合ってからもそういうことはない。志同じものとして、仲間の手前もあるし、未だ照れもあるし、(今までのペースを考えると)彼に溺れたら、気がゆるんでしまうのではないか。  ただ、リーディのほうは気持ちを確認しあってから少しだけ、今までとは様子が変わった。  憎まれ口叩かれたりするのは相変わらずだけど。もっと色々表情を見せてくれるようになった。特に笑顔が増えた気がする。  二人になった時、以前は気まずくなっていたのが、それ以上は、無い。それは自分が恥ずかしいのでどうしても逃げてしまうのが一番いけないのだけど…。 「頭の中ぐちゃぐちゃ」 ステラは呟いた。 ―あの後レオノラさんが泣いて行ってしまった後私も居た堪れなくて、彼の手をそっと放すと、 「ごめんね…」 と呟いて私も西の塔から出て行ったんだ。 一人になりたくて。 中庭に戻り、噴水の近くの周りから目立たないに死角あるベンチに腰をおろしステラは項垂れた。 すると誰かの気配がして。ステラは恐る恐る顔を上げる。 「もー。あんたまで行っちゃうんだもん…。」 黒髪の華奢な踊り子が…自分を庇ってくれた友がそこにいた。 「メイ…それよりあなた、身体大丈夫なの?」 「だからあんなにフラフラだったからあんたを追っかけられなくてさぁ。もー。 リーちゃんのねーさんが高等回復呪文をかけて、ほらこの通り☆」 元気よくターンをする姿を見てステラはホッとした。 「私を治療しているときに、リーちゃんがあんたを追っかけようとしたんだけど、 セシリオさんに呼び止められて、別室に行っちゃったんだ。」 「…。」 多分、セシリオさんはリーディに何か私のことで言うことがあるのだろう。 「しっかしね。リーちゃん見直したよ。まーレオノラさんも恋敵だから余計に辛く当たったんだろうけど。実はこの前の会食ん時からヒヤヒヤだった。そしたらあんたが城に行くって聞いて、嫌な予感はしてたんだけど。」 「え?」 ステラはまばたきをした。 「メイは気が付いて?」  「まさか私があんたたちが想い合っているの気が付かなかったと思ってたの?バレバレだって。不自然なほど皆の前ではあまり一緒にいないし。あーそれにあんたがリーちゃん避けてたから。ホント素直なんだかじゃないんだか。」 ため息をするメイにステラはポツポツ話す。 「…どうすればいいか頭の中ぐちゃぐちゃで…。魔族でもある私は彼を好きになってはいけないとか反面リーディの想いも嬉しくて。」 そんなステラの様子を見て、メイはクスリと笑ってこう言った。 「そう言う周りはいったん置いといて、私の率直な主観と感想だけど、あんたのそういう見た目の大人っぽさの反面うぶなところはすごい魅力だと思うよ?」 「ええ?」 驚くステラを余所に、メイは再びゆっくりと話し出したのだ。
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