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ヌーによる講義
ガルファンと初めて交わってからというもの、わたしの日常は変わりつつあった。
おもにご飯どきに。
朝、ガルファンと一緒に起床して、執事さんの作る朝食を二人して食べた後、決まってガルファンは唇でろんでろんのお面を口に咥えて持って来るようになった。
受け取ったら最後。
そのままベッドへと逆戻りになり、もはや三日三晩は決定事項なのか、きっかり三日はヤラレっぱなし……ではあるが、ガルファンも前回の教訓をしっかり生かしてくれているようだ。
気絶はするが発熱するまではしない。手加減と言っていいのか何なのか、執事さんに助け出される前にきちんと終えてくれる。
しかし三日三晩はデフォらしい。
当然、終えた後は生きる屍と化すわたしに、ガルファンは気を遣いながらもその日の夜にはお面を携えて来るので、竜の生態 ( 性欲 ) について学ぶべきだと真剣に考えた。
が、本人とは話せない。
お面を受け取る受け取らないの攻防は、断った時のガルファンのしょんぼり具合が半端ないので、二回に一回はオーケーの返事を出している。
それでも一日空けたらマシなぐらいの頻度なので、わたしはいよいよ追い詰められていた。
「お二人共に大切な話がございます。よってコレは暫くお預かりしましょう」
まさに今、ガルファンが黄金色の瞳をキラキラさせて意気揚々とお面を咥えようとした瞬間、オールバックのいつもの姿に戻った執事さんが横からソレを奪い取る。
たちまちガルファンの鼻頭に皺が寄り、牙を剥き、ギャワワ!という奇声を上げた後、執事さんの膝蹴りがガルファンの顔面に炸裂した。
……酷いかもしれないが見慣れているので少々のことでは動じなくなっている自分が怖い。
鼻血を吹きながらそれでもギャワ!と抵抗するガルファンの顎を蹴り上げ、鋭い爪先で反撃された執事さんのスーツがズタボロに切り裂かれる。
日常茶飯事となった二人の激しいバトルは1分程で勝敗がついた。
「私に勝とうなど1万年早いですよ」
殴られ、蹴られ、顔面を腫らしたガルファンがわたしの膝に頭を寄せる。こちらもデフォなので心得たわたしは負けた彼の鼻にティッシュを丸めて詰め込み、よしよしと撫で摩ってあげるのだ。
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