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人生に疲れることは、生きていれば誰にでも訪れるものだと思う。
人間関係が上手く行かなかった時。
仕事の壁にぶち当たった時。
金銭的に困窮した時。
そして、手酷い裏切りに傷付いた時。
わたしは先週から引きこもっている。
同棲していたろくでなしの彼氏が家財道具一式、勝手に売り飛ばした何もない部屋で。
働かない。ギャンブル好き。女好き。けれど顔だけは最高に良い男だった。
惚れた弱みで甘やかしていたのが悪かったのだろう。
ある日、仕事から帰って来たら、ガランとした部屋に愕然とした。
テーブルもイスも冷蔵庫も食器も、コップ一つさえ残されていない。
かろうじて残されていた古いベッドの上には、変なシミ付きシーツと束になった見知らぬ封筒が無造作に置かれている。
嫌な現実に頭を殴られた。
理解などしたくないのに、浮気の証拠と消費者金融からの取り立てが否応なしに突き付ける事実。
………震えが止まらない。
50万。30万。120万。60万。……200万。
しめて460万。連帯保証人 高宮 ゆうり様宛。
恋愛脳にやられていた時に、彼氏のお願い愛してるという甘い言葉に騙され判子を押した結末がコレだ。
何度かけても繋がらない携帯。
メールも既読にならず無視されている。
3ヶ月過ごした日々は単なる幻想で、ろくでなしに引っかかったバカな女だという結論は、出したくないのに簡単に出てしまう。
………死のう。
怒りや諦めや理不尽さに自尊心が砕け散る。
あらゆる感情が怒涛の勢いで駆け巡り、咄嗟に住んでいるマンションのベランダに飛び出し足を掛けたところで……我に返った。
ここ、二階だったな。
飛び降りたところで確実に死ぬとは言いがたい高さ。
自分のマヌケさに少しだけ冷静さを取り戻した後、汚らしいシーツを剥ぎ取ったベッドに倒れ伏した。
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