痴女改め、高宮 ゆうり 人間です

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「あのぅ、執事さん。大変申し訳ありませんが、何か羽織るものがあれば貸して頂きたいのですが……」 シーツにくるまっていたのに、よろけた拍子にババババン!と晒された胸。いくら夢とはいえ、変態ではない壮年の執事さんに見られたであろう事が恥ずかしくなる。 「ヌノテフホフです。つい話をせねばと焦っていたようですね。勿論、お召し物はご用意させて頂きますが、その前に湯浴みをされてはいかがでしょう。温まれば身体も楽になりますよ」 ご用意は出来てますと、風呂場に案内された。 正直、有難い。葡萄に類似のものを食べたせいか、程よく体力は取り戻していた。 だから余計にだと思うけれど、先程から身体と頭に耐えがたい痒みがある事実に気付いていたのだ。 パンイチしかり、この痒みしかり、こんな迷惑な現実を忠実に再現しなくてもいいのに。 「パンイチノチジョ様。お手伝いします」 「は? いやいや結構ですよ。執事さん」 「ヌノテフホフです。いえいえ、パンイチノチジョ様。ご遠慮なさらずとも良いのですよ」 「あのね、執事さん。遠慮はしていません。それと……わたしの名前は 高宮 ゆうり と言いまして」 「ヌノテフホフです。……おや? 若様に聞いたお名前ではパンイチノチジョ様でしたが」 「それは偽名です。忘れて下さい執事さん。というか、聞いたってどうやって?」 「ヌノテフホフです。わたしと若様は意思の疎通が出来るのですよ、パンイチノ」 「高宮 ゆうりです。聞こえてますよね」 「ええ。……ですが、なぜパンイ」 しつこい。貴方、すっっごくしつこいです。 こちとら、腕で胸を隠しながらパンイチ姿で押し問答しているんですけども? 「……ヌノテフホフさん、わたしは一人で入りたいのです」 「仰せのままに。高宮 ゆうり様」 なんつー腹黒なんだ。 執事さん呼びがよほど気に食わなかったとみえる。何度も聞いたからいい加減覚えましたけどね!
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