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一体何がどうなってこうなっているのだ。
女王による再三の呼び出しを無視した結果、女王はガルファンと交渉する材料としてわたしを手の届かない日本に帰した。
交渉とは子供達のことである。
希少種の竜を早く繁殖させたい女王と、まだ大人になりきれてない彼らと離れたくないわたしの思いは平行線だった。
ガルファンは勿論わたしの意見に同調している。簀巻き使者が来るたびボコって追い返し、ボコられながらも毎日儀式への参加を催促しにやって来る。
交わらない気持ちは女王の強引な手段を引き出し、わたしを呼び戻す条件としてガルファンを脅すことにしたのだ。
大げさに言えば子供を取るかわたしを取るかである。
もう少し待てば儀式に参加出来るのに、何をそこまで強硬に出るのか。
答えはシンプルだった。
繁殖出来る竜がガルファンしかいないから。
というか、番を得た若い竜がガルファンだけだと、女王に聞かされるまで知らなかった。
子供と引き離せば親は子作りに集中出来る。
只でさえ竜が番を得るのは至難の業なのだ。
早くに儀式して可能性を高めるべきだというのが女王の意見だった。
故郷に帰れるわたし。
子供達は番を得るチャンスが広がる。
ガルファンは番と思う存分ヤレる。
一石二鳥どころか一石三鳥の名案と女王はのたまっていたが、それはただの押し付けだ。
女王は甘い。
竜の性質をわたしより分かっていない。
一日のうち数時間すら番と離れたくないという執着を見せるのがガルファンです。
目の前で攫うような真似をされて黙ってるわけもなく。本能のまま怒り狂って城に突撃したようで、交渉なんて高度な話し合いは最初から無理であった。
結果、城は全壊。女王は瀕死に逆戻り。
儀式の予定も立てられないので仕方なく、復活するまでは執事さんが女王の代理を務めることになったらしい。
ファントム国の状況は分かった。
さて、ここからが肝心です。
ガルファンはどうしてその姿で日本にいるの?
「女王の意識ないもん。ヌーは送った者しか呼び戻せないって言うし。だからちょっと、おじーさんに協力してもらったの」
聞けばあの強欲なおじーさん、先々代の王様だった。つまり執事さんと女王のお父さん。しかも二人より魔力も知識もあるんだって。
ガルファンはわたしを連れ戻す薬を作れと泣き付いたと言ってるけど、たぶん違うのだろう。
迎えに来るまでにかかった時間。
その間、大人しく待ってたなんてことがあるのかな? ん、ないな。
帰ったらまず、謝罪に訪れねばなるまい。
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