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翌朝、わたしはまた女優になった。
練り上げたねつ造ストーリーを語るために。
王族であるガルファンは国を離れることが極めて困難な立場である、と。そんな彼を支える為、わたしもその国に移住することに決め、今日、発つことを打ち明けた。
女王のやり方にはムカついたし廃人にもなったけど、帰って来れて良かったと思う。
ガルファンを紹介出来たし、認めて貰えた。
それだけで満足だ。
別れの挨拶に涙が出る。
「それではまたお会いしましょう。今度は子供達も連れて来ます」
「え?」
「楽しみに待ってるわ」
和やかな雰囲気で微笑み合う夫と両親。
わたしは一人首を傾げる。
またって、またはないよね? え、あるの?
「あるよ。当たり前じゃん。 今回の件で僕はまだ怒ってるんだよ。女王が回復したらいつでもユーリが好きな時に里帰り出来るよう僕が脅……言うから」
「嬉しいけど……いいの?」
「いい。けど、一つだけ約束して。
僕を捨てるつもりで帰るのは絶対にナシね」
「そんなことしないよ!」
「うん。ありがとう……いま自分で言って激しく落ち込んだ。やだ。辛い…帰ったら慰めてくれる?」
「……う、うん。分かった」
「な、な、な、舐め舐めも……して欲しい」
田舎特有のひと気のない道で良かった。
言ってる言葉は過激なのに純情ぶってもじもじするのか。小声で三回と付け足したくせに、顔を真っ赤に染めている。
まぁ、うん。それも……分かったよ。
いっぱい心配しただろう。わたしもガルファンが恋しかったのは事実だ。早く帰って安心感のある本来の姿に包まれたい。
「じゃ、これ飲んで僕の手を握って。帰ろう、子供達の待つ僕らの家に」
言われた通り赤いカプセルを飲み込む。
意識が揺れた。
力の入らない手をガルファンの大きな手が包み込み、ぎゅーぎゅーと痛いぐらいに握られる。なんでも、魔力のないわたしに手から注いでくれるそうな。その魔力が身体に満ちたら帰れるらしい。不思議だ。
「本当はちゅーがいいけど我慢する。これは僕じゃないもん。その代わり帰ったらいっぱいするね」
「うん。久しぶりに三日三晩でもいいよ」
言った瞬間、手から強烈な衝撃が流れ込んで来た。歪む視界に吐き気がする。ビリビリと全身に伝わる激痛にガクリと意識を失った。
で、気付いたのはベッドの上。
悲壮な竜のガルファンがいて、子供達がいて、例の青い実を口々に携えている。
なるほど。また死にかけていたらしい。
違う意味で感動の再会だ。
皆、心配かけたね。大丈夫だよ。
もう慣れたから。( 笑 )
ただいま。わたしの愛しい家族たち。
< 完結 >
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