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目にした光景が信じられなかった。
女王と、女王の取り巻きどもが、自分の全てとなった番であるユーリを攫うなんて。
( パパ、どうしたの? )
( ママ、どこ行っちゃったの? )
( 僕ら以外の匂いがする )
アレッド、ソブル、コハク、空中で遊んでいた子供達が超特急で部屋に戻った僕に気付き追いかけて来た。
後一歩、及ばず。
助けを求めていたユーリの姿が目に焼き付いている。
この国の男が他の男と番った女を攫う理由なんて一つしかない。女王はヌーからユーリに乗り換えたのだ。男から女に。寄りにも寄って僕の見ている前で堂々と、だ。
怒りの咆哮を歯軋りで堪える。
この場に子供達が居なかったら屋敷をぶっ壊していたかもしれない。
それぐらい僕は激怒していた。
許すまじ! 女王! 絶対にぶち殺してやる!
( ママが連れ去られた! 取り戻して来る! )
( 僕も行くーー )
( 僕だって行くよ! )
( 匂いは覚えた。僕が仕留めるからね )
飛び出した僕の後方を必死で着いて来る子供達。頼もしいけど手出しは無用だ。僕の番は僕が守る!
だけど……
城に到着した時にはすでに、ほんのりとした残り香だけを置いてユーリは居なくなっていた。
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