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「よく来たガルファンよ。ああ、子供達も居るなら話は早い。パンイチノチジョを呼び戻して欲しければ、こちらの言う通りにして貰おうか」
女王が何か言っている。
だけど一つも中身が頭に入って来ない。
ユーリが居なくなったのに笑顔で話しかけてくるなんて、その態度はおかしいだろう。
笑い事じゃ済まされない。
何処へやったの? ユーリを返してよ。
返せ。返せ。返せっ!!
「親衛隊。子供達を確保しろ」
「はっ!」
取り巻きどもが動いたことで僕の身体も反応した。狙いはただ一人。女王の驚いた表情が眼前に迫る。反撃する余裕なんて与えるものか。
急所である喉笛に食らいつく。上がる血飛沫に誰かの悲鳴が聞こえたような気がした。
「女王っ!」
「ガルファン様っ! おやめ下さい!」
( ヤバイ! パパが暴走してるぞ! )
( ヌーを呼んで来る! アレッド、コハク、僕が戻るまでパパを頼んだよ! )
( 分かった。何とか食い止めるよ )
気が付いたら僕は瓦礫の中で転がっていた。
そして、なぜか息を切らした子供達と少しばかり焦った様子のヌーに覗き込まれている。
「ソブルが来た時は何事かと思いました。やっと正気に戻ったようですね」
( ヌー、ユーリが、ユーリが居ないんだよ )
「……そうみたいですね」
冷静に響いた声にカッとなる。
そこから後の記憶はない。
次に目を開けた時、僕は自分の屋敷のベッドの上に居た。
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