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全然身動きが取れない。
視線で状況を確認するとヌーの戒めで雁字搦めにされているようだ。
そこに、容赦なく耳に流し込まれる現実。
ユーリが女王により故郷へ帰されたこと。
帰した理由は僕と取り引きする為だったこと。
術を発動した本人しか呼び戻せないこと。
その本人は僕がボコったから意識不明。
回復するまで待たねばならず、また待ったとしても呼び戻す交渉が必要とのことだった。
聞いている間、何度も発狂しかけた。
帰したって何?
呼び戻すって何?
待つって期間は? 一時間後? 二時間後?
それ以上は待てない。待つ気もない。
青い実を取ってくるよ。だからこの忌々しい鎖を外してくれないかな。
「無理ですね。貴方は番と離れて情緒不安定なんです。女王どころか城を全壊したことすら覚えてないでしょう」
( だったらヌーが取りに行ってよ )
「そんなヒマがあるとお思いですか。城の崩壊に巻き込まれ、兵や親衛隊や政治を担う者達が残らず重症に重体なんですよ。街に損害が出なかったことは救いですが、国の中枢である者が誰一人として残っておりません。早急に誰かが代わりを務め、機能不全状態を改善せねば」
( 難しくてよく分かんないよ。話を戻すけど、ヌーが行かないならやっぱり僕が )
言葉の途中で思い切り殴られた。
右に左に頭頂部に。最後は額にぐりぐりと拳をめり込ませ、地を這うような怒声が落ちてくる。
「若様に察しろというのは無理でしたね。分かりました。はっきりと言って差し上げましょう。一つ、貴方は危険なので戒めは解きません。二つ、貴方が仕出かしたことは私の責任になります。なぜか……保護者だからですよ。尻拭いとして臨時の王にならねばならず、全壊の城の建て直し、怪我をした者達への補償、この事態を招いた女王への裁き、儀式の執り行い、などなど。とっっっても面倒くさい仕事が目白押しですね。三つ、二つ目の理由により、私は若様にも女王にも猛烈な怒りを抱えています。いいですか、怒ってい、る、の、で、すっ!」
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