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「なぁ、ガルファン。ユーリに早く会いたくねぇか? 俺は会いたい。会って激しく殴られてぇよ」
( お前の気色悪い趣向なんか知るか。会いたいに決まってるだろ。でも女王が目覚めなきゃどうにもならないんだ…… )
ヌーは女王に青い実を与えることを許さない。女王は勿論だけど、僕へのお仕置きを兼ねた制裁を発動中だからだ。
こうしてる間にも、ユーリは元の世界で日々を暮らしている。本来の日常を取り戻したユーリが僕を忘れてしまうかもしれなかった。
忘れなくても、あんなに魅力的なのだ。
違う誰かに奪われやしないかと、内心ビクビクと震えている。
夢の中ですら竜の僕を求めてくれたユーリの愛情を、疑っているわけではない。態度でも言葉でも示してくれたから、そこはちゃんと信じている。
だけど。
同じ種族の者に、同じ環境で育ったであろう雄に、僕は驚異を感じてしまう。
女王がユーリにどこまで説明したのか知らないし、全部を言っていたとしても離れている期間が長引けば、何の音沙汰もない僕を薄情に思うだろう。
そうじゃないのに、それを伝える術がない。
愛していると、帰って来てと願っていても、何一つ伝わらないのだ。
誤解されても仕方ない。
同族のアプローチを止めることも出来ない。
怖い、怖い、物凄く怖い。
今までユーリに捧げていた僕の愛は、はっきり言って独りよがりだった。応えてくれたけど、いっぱい迷惑をかけたのも事実である。
すぐ頭パーンになるし。
衰弱するまで抱き潰すし。
な、舐め舐めだって望んじゃうし。
今更反省しても遅く、後悔しても遅く、自業自得のくせに捨てられたくないと思っている。
僕が女なら僕みたいな奴を絶対に選んでいない。要は積み上げた己の不甲斐なさに打ちのめされていた。
「まぁた泣いてやんの。泣くぐらいならもっと頭を働かせろよな。と言ってもお前は竜だから無理だろうけど……ったく、仕方ねぇな。俺が秘策を伝授してやるよ。おいガキ共、こっちに来い」
目が溶ける。
ユーリが僕の知らない雄の手を取り去って行く姿を想像してしまった。嫌だよ。会いたいよ。泣きすぎて頭痛がする。
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