バカも休み休み言え

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見るも無残な惨状である。 執事さんのスーツもところどころに爪で引っ掻いたような跡が残され、綺麗に後ろに撫で付けられていた御髪も乱れまくっていた。 何が起きたというのだ。 知らぬ間に脳内が危険人物でも作り出したか。 「ははは。驚かせましたね。すみません。これはガルファン様が独占欲を発揮して、癇癪を起こされた結果ですので心配なさらなくてもいいですよ。ほら、見て下さい。あのように拗ねまくっていじけております。お可愛らしいでしょ」 指差す方向を見れば、わたしが寝ていたベッドのシーツにくるまり、こんもりとした物体が出来上がっていた。 破壊尽くされた感のある部屋だが、そこだけが綺麗に元のままだ。 シーツの隙間から半目の黄金色が見え隠れしている。……なるほど。いじけてますね。 「湯浴みの手伝いがお出来になれないので私に頼んだはいいけれど、自分以外が乙女に触れられるのが余程お嫌だったらしくて。我慢する為に暴れまくったというわけですよ」 「……ガルファン。わたし、手伝いは断ったよ」 「そうですよ。こちらは指一本も触れておりませんのに、触れる許可を出さなければならなかった苦しみで、私にまで八つ当たりをされてもですねぇ」 部屋の惨状もさる事ながら、呆れたようにため息を吐いた執事さんも気の毒だが、ガルファンの純粋な気持ちは素直に嬉しかった。 けれど同時に、溢れんばかりの愛情が身に染みて、成り行きで指名してしまった罪悪感が込み上げる。 むむ……複雑だ。
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