660人が本棚に入れています
本棚に追加
パンパンに腫れた瞼と、化粧を落とさずにいた顔面が酷いことになっていた。
洗面台の鏡で見た自分の姿は化け物のようで、絡まり切った肩までの黒髪を手ぐしで整える。
櫛までない。
タオルもない。
根こそぎやりやがったろくでなしに湧く怒りを抑え込み、憮然とするふくれっ面の口角を無理に引き上げた。
キモい笑顔だ。嘘くさい。
でも、バカな女には似合いの顔だと納得もした。
時間は流れていく。
人の感情などお構い無しに、取り残された自分に平気で今日という明日を運んで来たように。
忌々しいが仕方ない。
恨んだところで今日が平日なことに変わりはないのだから。
私情で何が起きようが会社には関係ない話で、社会のルールに縛られることは大人として当然の行為だろう。
休む選択肢はない。
そんな事をしたら、ろくでなしに食い物にされた自分を認めるようで益々情けなくなってしまう。
事実に目を逸らしていたら生きられない。
嘆き悲しんでも辛いのは自分だけだし、不毛な感情など早く取り去った方がいいに決まっている。
僅か3ヶ月という短い期間で押し付けられた高い勉強代は、コツコツ貯めた貯金を崩せば払える額だ。
大丈夫……わたしは大丈夫。
自分を鼓舞するように気合いの張り手を頬に食らわした。
最初のコメントを投稿しよう!