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何の気力も湧かない。
持ち直したメンタルは倒産というトドメの一撃により、呆気なく崩壊していた。
食事も睡眠も仕事も男も、生きることさえどうでもいい。
親に顔向け出来ない借金の問題は片付けたし、世を去る為に書き上げた遺書も残している。
飛び降りなくてもこうしていれば、いずれ死ぬだろう。余計な用力は使わずに、確実に。
大の字に寝そべって、静かにその時を待つだけだと思っていたが、この猛烈に込み上げる痒みだけは我慢ならなかった。
垢で塗るつく身体。ベタついた頭皮をひと掻きするだけで白いフケが零れ落ちてくる。
死ぬにしても、こんなのはあんまりじゃないだろうか。幾日も風呂に入っていない女を捨てた姿のまま人生を終えたくはない。
お風呂に行こう。
衰弱しきった身体は思うように動かないけれど、身綺麗にしてから死にたい気持ちは止まらなかった。
服を脱ぐのも息が切れる。
休み休みゆっくりと取り去っていたにも関わらず、衰えまくった体力は限界を迎えた。
激しい頭痛と耳鳴り。
ぼやけた視界に点滅するようなモヤが白く発光した瞬間、目を開けている事が出来なくなっていた。
そして、冒頭に戻るのである。
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