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その直後である。
上にいた男が消え去って、代わりに燦然と輝く黄金色がわたしの身体にダイブしていた。
ぐえぇっ!!
鳩尾にめり込む重圧に飲み込んだものが潰れた声と一緒に外へ飛び出した。
悶絶級の痛みに耐えかねてえづいていると、今度は黄金色がわたしの上から消え去って、代わりに先ほどの男に抱き起こされる。
で、腹部に薄っすらと温もりを感じると、徐々に痛みは和らいでいった。
「バカですか貴方はっ!嫉妬に狂って私の術を破る力を出すのなら、ご自分の番にも気を回しなさい!」
ギャワワッ! ギャワン!ギャワワン!
ああ……やっぱり見間違いじゃなかったんだ。ラブリーな私室にどうやって来たのか知らないが、桃色絨毯の角に転がっていた簀巻きはガルファンだったらしい。
「ほんの冗談でしょうが。私の種族は竜ではないのですよ。食物を分け与えた所で閨へのお誘いにはなりません」
聞いているのかいないのか、床から跳躍したガルファンが唸り声を上げ、男目掛けて火を噴いた。
えええっ!! 待て!待て!待てーー!!
わ、わたしも居るぞ!この男の側に!
ギュッと目を瞑り丸焦げを覚悟したが、熱さも痛みも感じない。……おや?
「元の姿に戻った私にそんな小細工が通用すると思いましたか。たかだか300年しか生きていない貴方が竜の本能で挑んで来たとしても、所詮は小童の戯れに過ぎません。反省なされませ」
男が上空で羽ばたくガルファンの口を片手で握りつぶしている。凄いなこの人……と感心する間もなく、その手から茨のような鎖が出現しガルファンを元の簀巻きへと変えていた。
呆気なくドサッと床に落ちたガルファンは苦痛に喘ぎ、あちこちから血が滲み出ている。
よく見ると顔面もボコボコに腫れ上がっているではないか。
「ガ、ガルファンっ!」
「いけません奥様。今の若様は理性を失っておいでです。危険ですので近付いてはなりませんよ」
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