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ぽかーーんである。
背中まで伸びた銀髪に目がチカチカし、どこぞのモデルか天女かと思う端正な顔立ちの男は、この世のものとは思えない異次元レベルの麗しさだ。
背後に薔薇の花びらやキラッキラなエフェクトが飛び散る残像が見える。
「……本当にヌノテフホフさん?」
「ええ。いまご説明した通りでございます」
茶を啜り、見惚れ、また茶を啜りながら向かいに優雅に腰掛ける自称腹黒執事のヌノテフホフさんの言葉を咀嚼していく。
纏めるとこうらしい。
わたしは三日三晩の婚儀をえらく超過した五日目の朝、こちらの腹黒によって救出されたそうだ。
最初の失敗を取り戻すべく、二回戦以降は張り切りまくっていたガルファンだったが、張り切り過ぎて竜の本能が抑え切れず暴走。
婚儀終了に訪れた腹黒は、いつも以上に何重にも複雑に入り組んだ術の扉に驚いて、ガルファンの仕出かした暴挙を知ることになる。
何とか解除して中に入れば、気絶して発熱しているヨボヨボなわたしをガルファンは組み敷き襲いかかっていたので、止めようしたら大層な反撃に合ったらしい。
仮の姿 ( オールバック ) ではガルファンに勝てないので、本来の姿に戻ってやり合い無事にわたしを保護出来たということだった。
仮とか本来とか、突っ込みどころはあるが敢えてそこには触れないでおこう。
ここは元の世界の常識が通用しないのは百も承知だから。
「ちなみに今は救出から一日が経過しておりますが、若様はまだあのように正気を取り戻しておりません。仕方ないですね、念願が叶って極度の興奮状態を無理やり引き離してしまったので」
……お礼を言った方がいいのかな。
血塗れでボコボコの簀巻きになったガルファンをラブリー部屋に放置して、訳も分からぬまま腹黒に着いて来てしまったけれど。
「心配されなくとも若様ならあの程度の傷ぐらい屁でもありませんよ。むしろ、これからです。しっかりとお仕置きを受けて頂かねばなりませんからね」
「えっと……それはどういったもので」
「奥様は聞かない方がよろしいかと……ああでも命まで取るような事はしませんよ。少しばかり精神的なアレで」
ニタリと妙な含みを持つ笑顔にゾッとする。
うん。こちらも触れない方がいいだろう。
頑張れガルファンと、そっと心の中で手を合わす。
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