0人が本棚に入れています
本棚に追加
紆余曲折を経て、5時半頃解散となった。有力な情報はでず、先生が恐れおののく理由も、100点を取る理由も掴めなかった。
周りは急いで帰る人や熟睡中の人、驚くことに、雨宮さんは友達に今日遊ぼうと話しかけていた。
「好女、帰ろうよ」
青年は、机に突っ伏す男友を誘った。初めは苗字が好女というのに驚いたが、実はここの校長の孫なのだ。
「好女、なにしてんの」
声をかけても、机に突っ伏したままだった。肩を揺する。
「ん、お前か。もう会議は終わりなんだな。帰るか」
好女はのそっと立ち、カバンを持った。
「居眠りしてどうしたの」
橙色の夕陽が照らす帰り道、青年は好女に訊いた。
「ただ眠かっただけさ」
好女は呑気に答え、ついでに欠伸をする。
「最近校長先生はどう」
校長先生とは好女を通じ、時折伺うことがある。
「爺ちゃんは相変わらず俺を疎外するよ。まぁ、役に立ってるんだけどね」
「役に立ってる?」
怪しい言葉に、思わず聞き返した。
「なんでもない。それより、先生のあの焦りを思い出すと、何か笑えてくるよな」
好女ははぐらかしと一緒に、はたまた妙なことを口にした。笑える? どこが。青年は全く理解が出来なかった。
「人って様々な顔があるからな。じゃ、俺はこっちだから」
分かれ道で、好女は去っていった。
最初のコメントを投稿しよう!