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(まあいいや。そんなことより、どうにかして村に連絡しないと。でも、さっきからずっとこの二匹が僕の両隣にいるし……どうにかして意識をそらさないと。でも自分が狸ってばれたら…あれ、でも竜吉たちは緑鬼の存在をしっていて僕をだましたんだよね。なら、その目的も当然知っていて、今頃村はもぬけのからになっているんじゃぁ………でも何とかしないと)
そうして吉助が頭をひねり続けるうちに、いよいよ一行は黒鐘山のふもとの開けた場所に到着してしまった。
「いよいよこれから化け狸狩りだ。おぬしら……わかっておるな」
わかってますよ、今日こそ、と口々に緑鬼たちが声を上げる。
「さて、念願の時だ。いくぞ、お前らぁ」
おおー、という叫び声、それから、どこから取り出したのか大きな太鼓のドオンという腹に響く音と共に、緑鬼たちは一斉に山の中腹にある化け狸の村の方面へと疾走していく。
出遅れた吉助も、どうしようという不安の中、とにかく必死になって彼らの後を追った。
吉助の願いもむなしく、吉助が村にたどり着いた時点で、ほぼすべての村の狸たちが緑鬼に囲まれて震えていた。その中には、吉助をはめた竜吉たち三匹の姿もあった。
(どうしよう、みんなが、それにお母さんや妹まで……)
吉助は、村のみんなを助けるために自分だけでも立ち上がるべきか、それとも緑鬼たちに自分が狸だとばれていないことを頼みに皆を見捨てるか、という二択のはざまで行ったり来たりしていた。
その間にも、新たにとらえられた化け狸たちが、一匹、また一匹と連れてこられては、鬼たちが囲む中に投げ入れられた。
鬼の力は圧倒的で、緑鬼たちは化け狸たちの家を殴って崩壊させたり、石橋を叩き割って逃げる化け狸たちの方へ破片を飛ばしたりしていた。
化け狸たちも熊や鬼、イノシシなどに化けて応戦するも、やはり相手が鬼、しかも凶悪なことで有名な緑鬼とあってか、恐怖のために思うように動けていなかった。
鬼に一匹の狸が、緑鬼に投げ飛ばされて宙を舞い、そのまま吉助の足元に落ちてきた。
「ごふっ」
すでに化け狸の方は満身創痍らしく、地面に血を吐き、ぴくぴくと体を痙攣させていた。
「おい、小心者。さっさと締め上げてこっちに引きずって来い」
吉助に緑鬼たちからヤジが飛ぶ。
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