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「……やられたな。まさか、あんな気の弱そうなやつに化けさせて間者として送り込んでくるなんて」
「ほっほっほ、あやつは術に関しては同年代一でのお。おぬしらでも気づかなんだだろう?まあ、これで這いつくばった狐どもの姿も拝めたし、目の毒にはさっさと消えてもらいたいんじゃがのぉ」
「お前ら、行くぞ」
痛む体を引きずりながら、一匹、また一匹と、化け狐たちは自分たちの里へと戻って行く。
やがて最後の一匹の姿が見えなくなると、村中に歓声が沸き起こって、吉助の周りにどっと化け狸たちが押し寄せた。
「すごかったぜ。緑鬼に化けた狐どもに一歩も引かないで」
「いやーいいもんを見たわ。自分もまだまだ頑張らんとなぁ」
「さすが私の子。やってくれると思っていたわ」
群がる化け狸たちとは対照的に、吉助をからかっていた竜吉たち三匹は、苦虫をかみつぶしたような顔で、まだ地面にしりもちをつき続けていた。
「ほっほっほっほ、吉助よ、素晴らしい活躍じゃったぞ」
「長老っ」
先ほどから化け狐の頭らしきものと話していた白髪、白髭の化け狸に声を掛けられ、吉助はそう返した。
「どういうことですか?あれが狐たちだとどうして知っていたんですか。それになぜ皆に伝えていなかったのですか?それに……」
「おう、そんなに質問を一度にされたら構わんわい。で、まあ、狐どもに一泡吹かせるために、こちらも色々情報収集しておってな。今回の件についてもあらかじめ情報は入っておったのじゃよ。ただ、どうせなら成功しそうだと調子にのり始めた狐どもの長っ鼻をへし折ってやろうということになってのぉ。それで、竜吉たちにそれとなく百鬼夜行のことを伝えて、おぬしに潜入させたのじゃよ。まあ、すまんかったな」
「いえ、長老さま、僕に頭を下げないでくださいよ。示しがつかないですよ」
「なに、今回の一番の活躍者だからのぉ。まあ、これであのあほ共はおぬしに余計なことをしてこなくなるじゃろう?」
茶目っ気たっぷりにウインクをしながらそう言う長老に、吉助は今までの疲れがどっと押し寄せてきたこともあって、足に力が入らなくなって地面に腰をおろした。
「ほれ、休んでいる暇はないぞ。これから凱旋じゃからのぉ」
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