ひと冬の甘い罠

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 部屋いっぱいに満ちていた温かな料理の香りは、すでに芳しい酒の匂いへと変わっていた。  北方の国・ルドルヤルト。  その本陣の、ダイニングルーム。  いまやこの地を統べる神・バルカローラの依り代であるマリウレスと、彼を支える選り抜きの戦士・七騎士たちが、共に会食を楽しんでいた。  邪神・バルカローラとしてのマリウレスから見れば、七騎士など単なる手駒のひとつに過ぎないが、彼にはまだわずかながらも真心が残っていた。  週に一度は、こうやって皆で食事をとり、杯を交わし、絆を深める。  そんな気配りでもって、7人の騎士と1人の客人をねぎらっていた。
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