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初日。僕はアイボリーの便箋にこんな一文を書いて、先輩の家の郵便ポストへ投函した。
『昼も夜も想っています』
すると、夜、先輩からこんなメールが返ってきたのだ。『昼も夜も想っています A』、これがタイトル。本文は無くて、添付画像が一枚。読み込むと、それは富士山からご来光が見える美しい写真だった。この添付画像が感想、ということなのだろうか。僕は五分ほど唸り、一つの考えに辿り着く。
「…朝方も想え、ってことか?」
なるほど、へそ曲がりな先輩らしい批評じゃないか。僕は俄然やる気になった。
新品のノートを取り出し、先輩からの返信内容を書き写す。表紙には、黒の油性ペンで『ラブレター百枚』と書いてみた。全五十ページもある新品をわざわざこの為に下ろしたのは、なんとなく厚みを持たせたかったというか、ペラ紙に書きたくなかったというか、そういう感情による選択だった。要するに、これが恋というものだろう。
という訳で、ノートの記念すべき一文目は、このような感じになった。
『昼も夜も想っています A.富士山とご来光(朝も考えろってか)』
その日から、僕のノートは一行ずつ埋まっていった。画像の意味を考え、書き写す時間は一日で一番楽しく、そして一番幸せだった。
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