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一息、白い煙を立ち昇らせながら、手にした煙草を無造作に灰皿へと投げ入れる。
たった一人、巨大なコンテナ車の中で、コンピュータ画面を前に、次々と流れゆくデータを見据える、その目には、いつになく厳しい表情が漂っているかのようだ。
「氷山さん、爆発物の残骸は、これくらいしか残っていないようなんですが‥‥。」
真澄の背中越しに、刑事の小林が車へと乗り込んで来る。
「すまないが、解析分離装置へかけられるものだけを、その中からピックアップしてくれないか?」
手元のキーボードへと指を走らせたまま、真澄の淡々とした声だけが時の流れを告げてゆく。
敵の要塞を目前にしながら、地中に埋め込まれた地雷の驚異に、今だ踏み込めずにいる警察官達。
感情を押さえ切れずに車を突入させた刑事の一人が、彼らの視界に壮絶な爆死という強烈な死に様を記憶させたのだ。
「‥‥‥どうした?」
茫然としたまま、立ち尽くすその気配に真澄が振り返る。
「こんなもの仕掛けるなんて‥‥。あいつら、人の命を一体何だと思ってるんだ。」
かすれそうな声が、じっと聞き入る真澄の胸に、言葉にならない痛みを放つ。
「これじゃ、まるでゲームを楽しんでいるのも同然じゃないか‥‥。」
鮮明に残る現実が、小林の手の中でわずかな破片となって無惨な命の終わりを形作っている。
例え様の無い怒りに震えるその腕を握り返しながら、真澄は口にしていた煙草を静かにもみ消した。
「人の生き死に、ゲームという言葉は使うな。リセットの効かない事は、地雷を仕掛けた奴らにも充分、解かっているはず。つまり、相手も命懸けで俺達を迎え撃とうとしてるって事だ。理由や目的はどうあれ、生死をかけて戦わなければならない現実もある。それが今、俺達のいる境界線なんだ。」
犯罪者を捕まえるのとは、勝手が違う。
テロリストと呼ばれる彼らの目的は、納得の行かぬ国家組織に対する抗議であったり、ある人間社会に対する抵抗であったり、理由は様々だ。
時には、常識では図り知れない意志が存在している事もある。
「そして、いつかはぶつかり合う時が来る。何が正しくて、何が間違っているのか‥‥その答えでさえ永遠に分からないのかもしれない。まして、それが生死を分けた人間なら尚更の事。‥‥思いを分かち合う事は出来ても、お互いを理解するのは難しい。人として、この世に生を受けた宿命なんだろうな、きっと‥‥‥。」
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