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プロローグ
───遥か上空を見詰める黒と赤の誰か。
何が、一体何が起こったと言うのだ?
「───!」
何故あんな所に───が居る?
「─!?───!」
唖然とする私の隣から、赤毛の女性が駆け出す。しかしその手が
空に届くとは思えない。ああ、私の元から───が去って行く。
何とかしなければ。───をこの手に取り戻さねば。魔法で助ける?
それは無理だ、使える魔法で今役に立つモノなど無い。ではスキルで
助けるか? これも無理だ。どのスキルを使うにしても対象と───の
距離が近すぎる。……クソッ! 今の私にはどうする事も出来ないじゃ
ないか!
「───」
何とかしようと焦る私は、見上げる視線の先で───と目が合う。
上空を漂う彼女の瞳に怯えも恐怖の色も見えない。それが何故なのかは
自然と分かる。───は信じているのだ、この私を。私が必ず助けて
くれると、純粋に信じ願っている。
信じられたのなら助けなければいけない、私が───を。
願われたのなら守らなければいけない、私が───を。
最早選択の余地は無く。愛する───が恐れていないと言うのなら、私も
恐れを捨て去るべきだ。今の私ではどうにも出来ないのだから、
今の私を捨てよう。
突如吹き出した紫色の炎が、黒い男を飲み込む───
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