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梓
一條梓、二十五歳。
大手飲料メーカーに勤めて三年。多分そこそこ優秀。男女問わずそれなりにモテる。だけど女には興味がない。
最後一年を惰性で付き合っていた恋人と約半年前に別れた。明確な理由は多分ない。二人ともいつの間にかときめかなくなっていた。けれども新しい相手を探すのも億劫でそのままズルズル。
「最後は無駄な時間だったかもね」お互いに笑って別れた。
恋人が途切れることはなかったものの、恋愛に対する熱量は人よりも低い。梓が一人でいるなんて珍しい。そんな知人たちの言葉で、そういえばと実感した。
それでも、どうにも気分が乗らなかった。
恋愛って、愛情って、恋人ってなんだっけ?
しばらく一人でいいよ。苦笑いの梓を周囲はよく言うよとはやし立てた。
――そしてある日、唐突に心を奪われた。
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